裁判員裁判ってなに?
刑事事件手続のQ&A
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裁判員裁判って何?
裁判員裁判とは、刑事裁判に国民から選ばれた裁判員が参加する制度です。
裁判員は、刑事裁判の審理に参加し、裁判官と論議して、被告人を有罪とするか無罪とするかを判断します。
有罪の場合には、どのような刑罰を言い渡すかを決めます。
原則として、裁判員6名と裁判官3人が、1つの事件を担当することになります。
裁判員制度の目的としては、以下のようなことが挙げられます。
- 一般市民に司法への理解を深めてもらうこと
- 一般市民の意見や日常的な感覚などを裁判に反映させること
- 刑事裁判に対する一般市民からの信頼を高めること
裁判員にはどんな人が選ばれるの?
裁判員の選ばれ方は?
裁判員は、衆議院議員選挙の選挙権を有する者の中から選ばれます。
毎年秋ごろに、選挙人名簿から翌年1年間の裁判員候補者がくじで選ばれ、裁判員候補者名簿が作られます。
そして、事件の裁判が始まる前に、名簿の中からさらにくじでその事件の裁判員候補者が選ばれます。
裁判員候補者には、裁判所がお知らせ(呼出状)を送ります。
呼出状を受け取った候補者は、指定された日時に裁判所に出向き、裁判長からの質問を受ける手続きをします。 例えば、裁判で不公平なことをしないかどうか、辞退の希望があるかどうかなどの質問をされます。裁判員になれない場合がある
裁判員になるために特に資格は必要ありませんが、例外的に、以下に該当する場合には裁判員になることができません。- 裁判員法が定める欠格事由に該当する人(国家公務員になる資格のない人)
- 就職禁止事由に該当する人(行政機関の幹部職員、法曹関係者など)
- 審理される事件と一定の関係のある人(被告人または被害者の親族など)
- その他裁判所によって不公平な裁判をするおそれがあると認められた人
裁判員の呼び出しって拒否できるの?
基本的に呼び出しは拒否できない!
裁判員の呼び出しを拒否(辞退)することは原則として認められていません。
もっとも、例外的に辞退を申し出ることができる場合があります。
具体的には以下の場合です。
- 年齢が70歳以上
- 地方公共団体の議員(会期中のみ適用)
- 学生(通学する学科に在学する者のみ適用)
- 5年以内に裁判員または補充裁判員を務めた
- 3年以内に選任予定裁判員だった
- 1年以内に裁判員候補者として選任手続きに出頭したことがある
- 5年以内に検察審査員または補充員だった
- 重い疾病などにより裁判所に出頭することが難しい
- 同居している親族の介護または子供の養育をしている
- 父母の葬式へ出席
- 社会生活上の重要な用務がある(その人が用務を処理しなければ事業に著しい損害が生じる恐れがある場合)
- 災害などの被害により生活の再建が必要な場合
など
どんな事件が裁判員裁判の対象になるの?
裁判員裁判の対象となるのは、重大な事件です。
具体的には、
- 殺人罪
- 強盗致死傷罪
- 傷害致死罪
- 現住建造物等放火罪
- 身代金目的誘拐罪
- 強制わいせつ致死傷
- 覚せい剤取締法違反
- 強盗強姦
などです。
法律の勉強をしなければならないの?
法律の勉強は不要!!
裁判員をするからといって、特別に法律の勉強をする必要はありません。
法律についての専門知識がなくても大丈夫です。
裁判員は、
- ① 犯罪事実の認定
- ② 認定した事実の法律へのあてはめ
- ③ 有罪の場合の刑の種類と量の決定
の3つについて判断します。
②の「認定した事実の法律へのあてはめ」とは、簡単にいうと、ある事実に法律が適用できるかどうかについて検討することです。
前提として、適用する法律を解釈することが必要となりますが、この解釈については裁判官から裁判員に丁寧に説明があります。
したがって、事前に法律の勉強をする必要はありません。
また、①の「犯罪事実の認定」や②の「刑の種類と量の決定」をするにあたり、専門知識は不要です。
裁判員制度には、一般市民の意見や感覚などを裁判に反映させるという目的がありますから、裁判員一人ひとりの知識や経験が活かされることが期待されています。
裁判員って具体的に何をするの?
裁判の流れ
裁判員裁判は、公判手続→評議→判決宣告という流れで進んでいきます。
公判手続
裁判当日、刑事裁判の審理に出席します。
審理では、被告人や検察官の話や、証拠などについて見たり聞いたりします。
評議
審理で見聞きした内容を元に、裁判官や裁判員と議論して判決の内容を決めます。
具体的には、被告人を有罪とするのか、有罪とした場合の刑罰はどうするのかなどについて決めることになります。
判決宣告
裁判官と裁判員で決めた判決の内容を、裁判長が被告人に伝えます。
裁判員の任務は、この判決宣告をもって終了です。
被告人や証人に質問できるの?
裁判員は、被告人や証人に質問し、返答を求めることができます。
公判手続で被害者等が意見を述べた場合も、質問をすることができます。
どうやって結論を出すの?
法廷での審理が終わると、裁判官と裁判員とで、事実の認定、法令の適用及び刑の量刑について話し合います。
この話し合いは非公開で行われます。
この話し合いでは裁判官と裁判員とが議論をすることが大切なので、裁判員になった場合はぜひ積極的に自分の考えを述べてください。
評議の結果意見が一致しなかった場合は?
裁判員と裁判官の全員の意見が一致しなかった場合、多数決によって結論を出します。
裁判員と裁判官は一人一票もち、その重さは同じとされます。
このとき、被告人を有罪にする場合には、裁判員と裁判官のそれぞれ一人以上が有罪と判断する必要があります。
つまり、裁判官だけ、または裁判員だけの意見で被告人を有罪にすることはできないことになっています。
どのくらいの期間拘束されるの?
拘束期間は事件によって異なります。
犯罪事実について意見が一致している事件の場合には2~3日で終わることもあります。
一方で、犯罪事実について意見の食い違いがある事件の場合には、それ以上の時間を要することもあります。
審理に2日間以上を要する事件については、できる限り連日法廷を開いて審理を行わなければならないとされています。
裁判員裁判の場合、最初の公判の前に、裁判所・検察官・弁護人が裁判の争点を明らかにし、証拠を厳選しています。
このように事前に訴訟の準備をしているため、公判が始まってからは連日的に法廷を開くことができ、多くの裁判員裁判は数日間で終わると見込まれます。
裁判員をしたことによる不利益ってないの?
プライバシーの保護は?
現在裁判員をしている人や、過去に裁判員を務めた人のプライバシーは守られます。
法律は、裁判員等の氏名、住所、その他の個人を特定するに足りる情報を公開してはならないとしています。
過去に裁判員等を務めた人を特定する情報も、本人が同意しない限り公開されないことになっています。裁判員の身の安全は守られるの?
事件に関連して裁判員等に接触することは法律で禁止されています。
また、裁判員等や、裁判員等であった者、またはその親族を脅したりした者は罰せられます。
報酬は出るの?
裁判員には、10000円以内の日当と旅費が支給されるほか、裁判所から遠く離れたところに住んでいるなど、裁判員を務めるにあたって自宅以外に宿泊することが必要な場合、宿泊料も支給されることになっています。
裁判員となった人にできるだけ経済的な負担をかけないよう配慮されているのです。
もっとも、交通機関や経路によっては、規定により旅費の支出ができない場合がありますから、裁判員に選ばれた際には、裁判所に聞いてみましょう。
守秘義務
裁判員は、
- 評議の秘密
- 評議以外の裁判員としての職務を行う上で知った秘密
について、守秘義務を負っています。
評議の秘密とは、裁判官と裁判員との話し合いの経過やそこにおいて誰がどのような意見を述べたかなど、評議の内容についての秘密です。
評議以外の裁判員としての職務を行う上で知った秘密には、例えば事件関係者の個人情報、裁判員の名前などが含まれます。
これらの秘密を家族や友人など外部の人に話すことはできません。
もっとも、法廷で見たり聞いたりしたこと、裁判員を経験した感想などを話すことは守秘義務に触れないので、話しても差し支えありません。
最後に
裁判員には、20歳以上の有権者であれば誰でもなり得る可能性があります。制度についてあまり知らないという方も、ここで基本的な知識や流れについて知っておくといいでしょう。
この先裁判員に選ばれた場合に、慌てずに裁判に臨むことができるようにしておきましょう。
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